企業が障害のある人を採用しなくてはいけない理由

 「なぜ障害のある人をなぜ採用しなくてはいけないのか?」

 皆さんはこの問いにどうお答えになるだろうか。

 少し想像してほしい。健常者より作業スピードが遅く、体調も安定しない。なのに給料は健常者と同じ。普通に考えて、残念ながらこのような人材を採用したいと思う人は少ないのではないだろうか。

 だからこそ、国は障害者雇用促進法を作り、企業に雇用率という縛りをつけて企業が障害のある人の採用を増やすように力を入れてきた。

 その施策は大きな効果を出した。実際に1000名以上の大手企業の平均雇用率は現在1.8%を超えた。しかし、障害者雇用を通じて聞いてきた多くの会社の本音はどうだったか。

 「雇用率があるから採用した」。

 ここにこそ障害者雇用の本質的な問題が隠れている。「雇用率ありき」で社員の本当の幸せを考えずに採用するから不幸が起こる。実際に採用したものの、現場では障害の配慮がなされない、理解されずに辞めてしまう人を見てきた。

 しかし、「雇用率があったから」こそ、障害のある人の雇用は進んできた。一方で「雇用率ありき」の採用方針であるから社員が幸せになれないこともある。

 であるならば、「雇用率ありき」この考え方が今限界を迎えているのではないだろうか。

 これからの障害者雇用に必要なのは、「何のために障害のある人を採用するのか」という本質的な問いであり、障害のある人を採用する明確な軸が必要なのである。今日はこのことについて、お伝えしていきたい。

 「何のために障害のある人を採用するのか」その答えを出す前に、このデータを見てほしい(このデータは、IIHOEの川北さんのブログからいただきました。ありがとうございました)。

これまでの20年とこれからの20年は違う.jpg

 このデータは、1990年から2030年の10年毎の日本の人口推移です。

 日本はこれから先20年の間に人口が10%も減ります。10人中1人は自然といなくなるのです。学校や会社に20人いたら自然と2名はいなくなるのです。

 また、0歳から14歳においては、20年前に比べ、35%も減っています。またここから先20年も33%減ります。そして、生産人口と呼ばれる15歳から64歳も17%減ります。

 一方で、65歳以上の高齢者は、ここから先20年で24%も増えます。

 ここから言えることは、いわゆる急激な高齢化社会を日本は迎えるということです。実際に20年前の1990年は5.5人で65歳以上の高齢者1人を支えてきましたが、2030年には1.8人で高齢者を1人支えることになります。

 そして、2000年から2020年までを5年ごとに掘り下げるとこのようなことがわかります。

2000年から2020年までを掘り下げると.jpg

 ここ10年で15歳から64歳の生産人口が10%も減るのです。100人の会社は10人、1000人の会社は100人が自然にいなくなるのです。

 かわりに増えるのは、65歳以上の高齢者です。22%も増えます。日本全体の人口割合で言うと、29.2%ですから約3人に1人は高齢者ということになります。

 このデータから見える近い将来の出来事はどんなことが起こるか。それは、企業が経済活動を行いたくても行えない状況がでてくるということです。募集しても募集しても人を採用できなくなるのです。もちろん、ITが効率を高め、海外に生産力を求めることもできるでしょう。しかし、ITがあっても人の仕事はなくなりませんし、海外に生産拠点を作っても、結果的には海外に富をもたらすだけであり、日本のためにはなりにくいです。結果、日本の国力は落ちていくでしょう。

 出生率が大幅に変わらなければ日本はこのような未来をたどることになります。

 皆さんはここから何を感じたでしょうか。ここから何を感じるべきでしょうか。

 私はこのように考えます。これはチャンスであると。海外に世界が今だかつて体感したことも、見たこともない高齢化国家になります。この状況の日本が、もし仮に海外からみて「すごい」という国を作ることができたら、どうなるでしょうか。もしそうなれば、世界に憧れられる、日本人が自分の国に誇りを持てる国が実現します。今はそんな国を作る、実現できるチャンスなのです。

 そのために必要なことは何か。日本は確実に生産人口が減ります。であれば、移民を受け入れる?しかしその前にやるべきことがある。それは、日本人のポテンシャルを引き出すことです。

 もうここまで人が少なるなるのだから、障害者だとか高齢者だとか、ニート、フリーターだろうが、女性だろうが大学中退者だろうが、中卒だろうが、うつ病だろうが、統合失調症だろうが、幻覚が見えようが、ゲイだろうが、がん患者だろうが、何だろうが日本人の可能性を信じ、ポテンシャルを引き出し、強みを生かし、できないことはみんなでフォローし合う。そんな環境を作っていかなくてはいけないのです。

 そして、これからの企業のヒューマンリソースにおける課題は、誰でも働ける職場環境を作ることでしょう。男性のような長時間働ける「強い」「都合のよい」人材に企業は頼ってきました。そのような人材はこれからは確実に減っていきます。そのような人「だけ」が活躍できる組織では組織活動自体が運営できなくなる可能性があるのです。

 ですから、障害のある人を採用するのです。以前の記事「企業に対して障害のある人が求める障害の配慮とは?」でもお伝えしましたが、障害のある人が活躍できない、長期就労できない、もしくは、障害者雇用を知っているのに採用しようとしていない職場は、どこか元気がない、社員が疲労困ぱいなどの可能性が非常に高いのです。つまり、障害のある人が活躍できる職場を作ることが、これから先の高齢化日本を迎える上で企業が取るべき戦略ではないでしょうか。

 企業は公の器です。個人のために存在するのではなく、日本のために存在するべきです。その企業の多くが、このように障害のある人が活躍できる職場を作り、誰もが活躍できる職場を作っていく。それこそが日本の国力を作り、海外から憧れられ、日本人としての誇りを取り戻すことになることであり、障害のある人を採用するべき理由なのです。

 しかし、実際にこのような話を人事の方にすると「理想だよね」と言われます。でも、よくよく考えてほしい。ビジネスとは、みんなでお金を稼ぎ、お金を使い、1人では到底成しえない夢や理想を実現しようとするからこそ、ビジネスなのではないでしょうか。それこそ、ビジネスの醍醐味なのではないでしょうか。

 それを理想と一蹴してしまうのは責任感がないとしかいいようがない。日本は今、危機にあります。今一人一人が立ち上がり、少しでも日本をよりよい方向に変えていく責任と覚悟を持つ必要があります。

 そして、自分たちの子ども達に少しでもよりよい日本を残していく。それこそ、現代、今生きる我々の使命ではないでしょうか。

■企業が障害のある人を採用しなくてはいけない理由
1.「雇用率達成」以外の採用動機を企業は作らなければ障害者雇用の本質解決はしない
2.日本は世界が体感したことのない超高齢化社会になる
3.このままでは日本の国力が落ち、国が保てなくなる
4.しかし、今は海外に日本を示すチャンス
5.日本人のポテンシャルを引き出し、誰もが働ける職場を作る
6.そのために、障害のある人を採用する
7.ビジネスとは理想、夢を、みんなの力を集め、実現させること
8.子ども達に少しでもよりよい日本を残していくことこそ、今生きる我々の使命


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矢辺卓哉(やべっち)

田舎で農業・電気通信工事士、東京で障害者雇用支援という田舎・東京を行き来する生活をしながら、エネルギーの地産地消、環境負荷の低い・企業だけに頼らない生き方を模索中。株式会社よりよく生きるプロジェクト代表取締役

「人生を味わいつくせる人を増やす」がミッション。

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