なぜ障害者は退職してしまうのか

<障害者はなぜ退職してしまうのか?全体像が知りたい方は障害者活躍白書、企業の方は、障害者社員・上司:意識調査をご覧ください>

 本日、Twitterでご質問をいただいたので回答いたします。内容が内容だけに、140文字では伝えられない。苦笑

 ちなみに、質問は下記のような内容です。

特例子会社って単に法定雇用率を高めたいとか助成金がもらえるからやっているだけなんだろうか?何人も雇っては辞めさせていくうちの会社に不信感がわいてきます

 ここは障害者雇用のプロとして、そして、ブログ、ツイッターで情報発信をしている身としてしっかりと回答して参ります。皆さんも障害者雇用について何か聞きたいことがあれば、ご連絡下さい。なるべく回答するようにいたします。

 まず特例子会社について回答します。特例子会社の設立経緯は私が聞いている限りでは、雇用率を達成するために作られることがほとんどです。それもそのはず、特例子会社自体が、雇用率を達成するために作られた制度であるからです。

 しかし問題は、やはり作ったは良いが、黒字を出せないということでしょう。ほとんどの特例子会社は赤字だと伺っています。特例子会社といえども「会社」です。黒字を求められます。とある特例子会社の社長さん曰く、「本社の経営陣にとって見れば、最初は雇用率が改善するのであれば…と思って設立を許可しますが、数年経つと利益を求められる。そのタイミングでどの特例子会社も四苦八苦する」とのこと。しかし、それでも、特例子会社の存在により「雇用率達成できている」という名目がある以上大きな改善は成されないのではないでしょうか(この考え方が、「障害者雇用はCSRのためのコストである」という考え方につながります)。

 ちなみに、実際に利益を出している特例子会社へ見学させていただいたことがあります。そこでもやはり、雇用率を改善するために、特例子会社は作られました。しかし、その後が周りの特例子会社とは違いました。

 その特例子会社の社長さんは、「障害者だからこの程度の仕事で…」ではなく、一般のレベルと同程度の仕事をするためにはどうやったらいいか?そして、障害のある人がどうやったら生き生きと働けるか考えたのです。そして、改善し続けた結果が、利益化につながったと伺いました。

 障害のある人は、売上があがってないから、「一生懸命やれ!」と言ってもできない人たちです。つまり、特例子会社が利益を出せるかどうかは、「言われたからやる」ではなく「やりたい」と思える社員が生き生きと働ける環境を作れるかどうかに掛っているのです。

 ご質問に回答するのであれば、以上のように、きっかけは雇用率を満たすためです。しかし、その後、利益を出しながら、社員が生き生き働くために汗水たらして努力することができるかどうかが特例子会社の大きなキーポイントになるでしょう。そういう意味では、fehoo_japanさんの会社の特例子会社は、利益を出せていない元気のない特例子会社になるかもしれません。

 しかし、

「何人も雇っては辞めさせていく」

ということに関しては、私は一概に会社だけの責任だと思えません。なぜか。採用やその後の活躍は、会社と個人がお互いで作り上げるものだからです。私は採用にずっと携わっておりますが、「会社だけ」「個人だけ」の努力で採用がうまくいくケースは見たことがありません。必ず失敗をします。

 fehoo_japanさんの会社は努力していないかも知れない。しかし、そこで働く障害のある人(もしくはその支援者)は「努力」したのだろうか。会社が何もしてくれないから・・・と諦めてはいなかっただろうか。

 こんなデータがあります。

■障害者を採用する予定がない主な理由
適切な担当業務を確保できないため       59.8%
障害者のための社内環境を整備できないため   43.1%
障害者用する余裕がないため           38.1%
法定雇用率を満たしているため          16.4%

成22年3月 東京都産業労働 平成21年度「障害者雇用実態調査」
-都内における障害者の雇用状況について-
http://202.51.52.145/koyo/shogai/enquete.pdf

 今企業が障害のある人を採用しないのは、不景気だからではないのです。採用したいけど、「適切な担当業務が確保できないから」です。「適切な業務が確保できない」とは期待する業務ができる障害のある人がいないということです。

 つまり、「企業が求める人材が障害のある人にはいない」と企業に思われているということです。企業は採用したいと思っているが、正しいかどうかは別として、採用したいような優秀な障害者がいないと思っているのです。

 障害があるから同じような仕事はできないと思われるかもしれません。しかし、障害があっても、強みや魅力は必ずあります。それを認識しようとしたのか。それを認識した上で、企業で働いているのか?またそれを磨こうと考えたのか?それを磨こうと一生懸命できる範囲で働いたのか?また、ただ単に会社を受けるだけではなく、入社前にしっかりと企業のことを調べたのか?自分の強みが生かされる職場環境と認識して入社したのか?しいては、自分が何を行うべき人間なのか?何のために働くのか?自分が何をやりたいのか?将来のキャリアプランは?そのようなことを考えた上での入社なのだろうか。

 それは、仕事ができるできないではなく、仕事の内容、仕事の大小ではなく心掛けの問題です。その心掛けが、できていないもしくは知らない障害のある人(または支援者)が多い(この辺の支援をこれからの仕事にしようと思っているのですが)。私は長年、障害者雇用の分野に携わっていますが、企業は障害のある人にできる限りの範囲で精一杯やってほしいと考えているところが多い。しかし、その「できる範囲で精一杯」もやらない人がいる。残念ながら、厳しいことをいうかもしれませんが、そのような人材が企業で評価されるはずがないのです。

 以上のように、障害のある人が「退職してしまう」問題は、企業に一方的に非があるわけでも、個人に一方的に非があるわけではありません。その問題をなくしていくのは、企業は雇用率だけに目を奪われるのではなく、個人はできる範囲で一生懸命やるという、お互いがよりよくなろう、よりよい職場を作ろう、よりよい仕事をしようという実直な心掛けと行動なのです。

 それを我々は忘れてはいけません。ということで、まとめ。

■なぜ障害者は退職してしまうのか
1.特例子会社は雇用率達成のために作られる
2.その後、利益化できるかどうかは、汗水たらして社員が生き生きと働ける改善ができるかどうか
3.退職は「会社だけ」でも「個人だけ」の責任でもない
4.退職をなくしていくのは、よりよくなろうという実直な心掛けと行動

 もちろん、fehoo_japanさんの会社の話の詳細はわかりませんので、あくまで一般論で書かせていただいたことをご了承ください。あしからず。

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矢辺卓哉(やべっち)

田舎で農業・電気通信工事士、東京で障害者雇用支援という田舎・東京を行き来する生活をしながら、エネルギーの地産地消、環境負荷の低い・企業だけに頼らない生き方を模索中。株式会社よりよく生きるプロジェクト代表取締役

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