妹たちの成長から考える適切な支援とは何か

 ご存知の方も多いと思うが、私には双子の知的障害のある妹がいる。彼女たちとは今、離れて暮らしているので、会うのは1年に1回、多くても半年に1回程度だ。

 その程度だからかもしれないが、彼女たちに会うといつも驚かされる。何に驚くのか。それは彼女たちの成長だ。

 彼女たちは、小さい頃は感情がうまくコントロールできなかったり、理論的な話が理解できなかったりした。しかし、1年振りに会うと、今までは怒っていたようなことでも、感情をコントロールできるようになっている。また、順序立てて説明すると話を理解できるようにもなってきている。

 また、言わなくても母親の料理の手伝いをするようになっていた。先日、私が実家に帰ったときには、簡単な料理を彼女たちが作ってくれた。

 私が大学に行くために上京したときと比べると天と地の差を感じるくらい成長している。彼女たちも同年齢の人から比べると遅いのかもしれないが、必ず成長していることはまぎれもない事実である。両親の努力や支援者の皆さんのお力添えも大きいのだろう。

 一方で、私は社会人になったり、社会でよく使われる言葉で違和感がある言葉がある。

 「新人だからこの程度で構わない」
 「3年目だから、この程度はやってもらわないと」
 「もう年だから」 などなど

 新人が行う程度って、どの程度でしょうか?
 3年目が行わなければいけない程度ってどの程度でしょうか?
 もう年だから何もしなくてもいいという明確な年齢基準があるのでしょうか?

 私が前職で体験したことがある。私の部下に(直接これを言える関係だから書くが)、うだつの上がらない同年齢の男性社員がいた。彼は、同い年だったが、結婚していて、専業主婦の奥さんと子どもがいた。

 転職してきたこともあり、成果を求められるが、その期待に応えられず、私のチームに配属になった。結論から先に伝えると、彼は今はイキイキと働いている。当の私と言えば、会社都合で退職するという何とも言えない結果になったのではあるが。

 それはさておき、彼が私のチームに配属になった時に、私は、前のチームリーダーと同じように、こう考えることもできたはずだ。

 「転職をしてきて、妻子もいるし、私と同い年だし、この程度はやってくれるだろう、やるだろう」と。そして、その程度の結果を求めることもできたはずだ。

 しかし、私は妹が成長する姿を見た経験からか、そうは考えなかった。私が考えたことはこうだ。

「彼は私と同い年であり、妻子もいる立場だが、彼に必要な支援は何だろうか」と。

 その結果、彼は、営業活動とくに売り込むということに恐怖を持っていたことがわかった。だから、私は彼に言った。

 「自社のサービス説明はしなくていい。お客さんの困っていることを聞いてきて。お客さんとコミュニケーションを取ることを意識しなさい。そうすれば、必ず売れるようになる」。

 その頃からだろうか。彼の仕事中の表情がイキイキとするようになったのは。結果はお伝えした通りで、売れるようになり、望む配属先に異動になった。

 彼に必要だったのは、「○○だから」という視点で彼を見て、「○○だから」という基準に彼を引き上げることではなく、彼に必要な支援をすることだったのだ。

 こと、我々は、「○○だから」という視点で相手を見がちだ。その定義は、効率を考えると有効に働くこともあるのだろうが、私の少ない経験から言わせてもらえば、人を輝かせるという視点から見ると、足かせになることは多い。

 見てきたように、人は必ず成長する。それは誰も間違いなく、例外なく。であるならば、知的障害だろうがなんだろうが、その成長スピードに合わせ、その人に必要な支援をするだけだ。

 そして、遅きに失することはない。何かをやろうと思ったときがその人のスタートであるし、ある年齢のあるべき姿など、幻想に過ぎない。

 多くの人が「○○だから」という幻想の定義にとらわれることなく、その人の可能性、生きる力、成長を信じ、その人に必要な支援をしてほしい。

 そういう考え方が、誰もが生きがいを感じ、笑顔で暮らせる社会になる1つの考え方ではないかと思う。

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矢辺卓哉(やべっち)

田舎で農業・電気通信工事士、東京で障害者雇用支援という田舎・東京を行き来する生活をしながら、エネルギーの地産地消、環境負荷の低い・企業だけに頼らない生き方を模索中。株式会社よりよく生きるプロジェクト代表取締役

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