濱中おさむ

 皆さん、濱中おさむというプロ野球選手がいるというのはご存知だろうか。我らが阪神タイガースの外野手です。かの有名なヤクルトの古田に「今後のプロ野球を背負って立つのは、岩村と濱中」と言わしめたほどの逸材です。

 そんな濱中ですが、濱中が注目されだしたのは、野村監督時代。「変化球を打つことに関しては一流だ。」ということで目を付けてもらい、だんだんと世間(阪神ファンの間?)に名を知らしめていきました。野村監督最後の年には、13本のホームランをかっ飛ばし、一躍有名に。

 星野監督の最初の年の2002年には、後半戦から使われ始め、18本のホームランと3割を超える打率を残す。ここから来年の4番は濱中という声が聞こえ始めた。そのとき濱中、24歳。右打ちのHRバッター。甲子園においてこれほど有利な打者はいない。濱中のおかげで、ここ10年は4番に困らず、掛布以来のミスタータイガースが生まれるか、とぼく個人は非常にワクワクしていた。

 そんな濱中でしたが、次の年の2003年、つまり阪神が優勝する年、開幕から4番を任され、3番金本が「濱中に打点王を取らせる」と金本がつなぎに徹するほど、濱中は信頼を置かれていた。その濱中もその期待に答えるように開幕から打ちまくり、5月終了時点で50打点近く稼ぎ、ホームランも10本以上打つ。そんな濱中につられるかのように阪神も快進撃を続けていた。

 そんな中、外野手である濱中が5月20日の広島戦、1塁帰塁の際に肩を捻挫してしまう。その後もたしか1軍にいて、1軍に同行しながら、怪我の様子を見ていた気がする。チームも濱中もノリに乗っている時期。たしか4番は檜山が務めていた。決して本人が悪いわけではないが、濱中と比べると役不足は否めない。この頃を境目に少しチームも停滞しはじめ、ファンから濱中の復帰を待望する声が聞こえ始める。

 6月13日だった。阪神が優勝した年の1985年から18年間負け越し続けている伝統の一戦の巨人との戦い。確か巨人が阪神を順位で追い詰めていた気がする。伝統の一戦とチームの状況。そのことが濱中を焦らせたのか。濱中はその状況下で、先発を志願。結果、決して強くない肩だった。どこかで無理をしていたのだろう。外野守備の送球の際、肩を再度故障。「右肩脱きゅうおよび関節唇損傷」だった。確か翌日には登録抹消され、手術という話が聞こえてきた。そして、実際に2003年7月4日に手術をする。阪神ファンはチームの快進撃の中、濱中の悲劇に言葉を失った。

 結局チームは、前半戦の快進撃もあり18年ぶりの優勝。日本シリーズに進んだが、4番不在の影響は大きく、星野監督最後の年に日本一にはなれなかった。濱中もそのときには怪我は回復し、守備はできなかったが打てると言うことで、DHで出場。前半戦で見せたような強打は見られず濱中らしくない日本シリーズだった。

 次の年、岡田監督の1年目。濱中は何となく試合に出ていたと思うが、実はこのときにまた怪我をする。5月6日だった。去年と同じ時期から1年後の2004年7月13日に再手術。選手生命の終わりか。誰しもがそんなことを感じていた。しかし、濱中は懸命にリハビリをこなし、今年の4月16日に2軍戦で復帰。その試合で初打席でホームラン。濱中の生まれ持った才能、運が再び目を覚ます。

 そして、きた5月6日。プロ野球の新しい試みでもある交流戦。新しいプロ野球の始まりにプロ野球ファンが胸をときめかせている中、濱中はDHで先発出場。2打席連続の三振。3打席目も凡打。誰しもがまだ濱中は早かったか、と思った。その時だった。

 神様、もし野球の神様がいるとしたら、彼は濱中を見捨ててはいなかった。8回表、1点ビハインドの2アウト満塁の場面で、バッター濱中。彼はやはりこのような場面で打順が周ってくる星の元に生まれているのだろう。前打席の内容から見ると代打を送られてもおかしくはなかった。しかし、岡田監督はそのまま濱中をバッターボックスへ。

 その濱中は、その期待に答えるように勝ち越しの2点二塁打。二塁上で雄たけびとガッツポーズ。今までの苦労や涙が自然とガッツポーズを出させたに違いない。

 ぼくはこんな選手が大好きだ。順風満帆だった24歳の頃。4番を任されていた頃。野球が楽しくて仕方なかっただろう。しかし、人生うまくはいかない。挫折。苦悩。濱中自身もおごりはあったのだろう。濱中はそれらを24歳の若さにして経験した。

 きっとこの選手は大成する。そう思わざるを得ない。いや、大成しろ!お前が大成しなくて誰が大成する!順風満帆な人生の何が楽しいのだろうか?

 ぼくは濱中を一生応援する。そう決めた昨日の試合だった。濱中の今後の野球人生に乾杯!

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