【書評】全脳思考

全脳思考
全脳思考

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神田 昌典
ダイヤモンド社 (2009-06-12)
売り上げランキング: 594
おすすめ度の平均: 4.0

4 右脳モデルと左脳モデルの融合
3 あくまでも仮説
3 意欲作だとは思います
4 500ページのボリューム、思考法
5 すばらしいの一言

 ぜひ読んでもらいたい1冊である。この世の中を変えるきっかけがあると思っています。

 ここ数ヶ月で、「不況が教えてくれたこと」というエントンリーを「その1」、「その2」という形で記載してきました。その中で私は、「理念が大切だ」とずっと言い続けてきましたが、その「理念が大切だ」と思ったきっかけは、実はこの本に影響されたことが非常に大きいです。

 詳細はこの後書きますが、この本はこの先の見えない世の中を手探りながらも、「現状、何が起こっているのか?」「この先どうビジネスマンとして行動すべきか?」ということが記載してあります。

 本書の考えは、「根拠がないと」などアマゾンのコメントを見ると理解できない人もいるようです。しかし、今はトヨタ自動車が赤字になるなど、工業時代からの価値観が変わっている今の先の見えない時代に根拠など示せるはずがありません。

 価値観が変わるなかでも、根拠がないことを前提にし、そのことを事前に提示し、根拠がない中でもできる限り根拠を示するなど読者に配慮しながら、今の時代の一歩先を読む意欲作だと思っていますし、私個人としては、非常に納得感がありました。

 そして、この本を読んで、先の読めない時代に本当に大切なこととは「理念」だと感じたのです。

 詳細は本を読んでいただきたいと思うのですが、本書を読みながら、私が理念の大切さを感じた流れは以下の通りです。

1.社会構造変化
2.働きがいのなさ
3.消費行動変化
4.物語の大切さ

 それぞれを本書を引用しながら見ていきたい。

1.社会構造変化
 P.12周辺

我々はみえなくなる世界で、見えない顧客に対して、見えない商品を提供しはじめている。(中略)抽象的な概念を生産し、物理的に人と対面することもなく生産物を交換し、経済を成り立たせようという社会へのシフトは、人類史上始まって以来のことである。

 これは簡単にいえば、インターネットがわかりやすい例でしょう。見えない世界で、見えない消費者に対して、自社の商品じゃない(見えない)商品も提供する。抽象的な概念で想像を働かせ、データでは読み取れない顧客心理を想像し、働くことが今は大切になっているのです。

2.働きがいのなさ
 P.15?17

 「10年前と比べて、今は仕事上で処理する情報があまりにも多くなった。残業時間は少なくなったが、決断・判断を求められるような企画・提案の仕事が多くなった。やりがい、モチベーションは、10年前のほうが高かった。今は仕事も面白くないし、給与も割に合わない。

 年齢にして35歳から44歳。現在のほうが「ストレスが大きい」「ややストレスが大きい」との回答数が65%を超えている。(中略)さらに顕著なのは、モチベーション。現在のほうが「モチベーションが高い」とはっきりと答えている回答数は、なんとゼロ%なのです。

 それでは、なぜこの年齢層はストレスを感じているのか。それは、前述の「抽象的な空間で、物理的に人と対面することなく生産物を交換し、経済を成り立たせようという、人類史上始まって以来の社会的シフトが今起こっている」に起因するのではないだろうか。つまり、世の中が新しい価値観へシフトしているのに対して、企業が今までの価値観のままで新しい価値観へ対応できていない矛盾、しわ寄せが、この35歳から44歳までの中間管理職のミドル層へもろに直撃しているのではないだろうか。

3.消費行動変化
 P.114

 その理由は、現在の買い手は、「より豊かな生活のために買う」のでも、「自分をよりよく見せるために買う」のでもなく、「本当の自分らしくなるために買う」ようになってきているからである。(中略)今はまさに「自己投影型消費」の時代になったと言ってもいい。

 生活に必要なものは充足し、その後、拝金主義成功者たちの醜態っぷりを見て、自己顕示欲望もなくなったあとに、最後に残った願望が自己実現である。つまり自分らしさを追求する願望をベースとした新しい消費形態が今本格化してきているとも言える。

 これは現在、草食男子という言葉が流行っている原因だとも思っている。草食男子と呼ばれる人たちは、同世代としては、欲求がないわけではないと思っている。彼らは、今までのホリエモンやバブル時代に派手に遊んでた人たちの今を見たときに、全く幸せそうではない、という様子を見たときに、「がっついて何かを求めることは良いことではない」という価値観の表れなのではないか。でも、売れている商品は売れている。それを実現するのが、次の物語だと思うのだ。

4.物語の大切さ
 P.118 ?119

 買い手が本当の自分になるために歩むべき道を、すでにその企業が歩んでいる場合、そこには共感が生まれ、自己投影が始まる。買い手は、自分が進もうとしている道を言葉で説明できるわけではない。誰も理解してくれない。ひとりぼっちの自分の想いを、すでに言葉に、そして形にしてしまっている企業に出合ったとたん、「そう、そう、こういうのを探していたんだ!」と共感することになる。

 たとえば、これはヘルシア緑茶が良い例である。ヘルシア緑茶を飲むことで、お客様は脂肪を消費した自分を投影する。それにより、痩せた自分を想像し、もしかしたら大好きなあの人と付き合えるイメージを持つかもしれない。そのように自分のありたい将来をイメージ出来る(共感する)からこそ、ヘルシア緑茶を飲む自分を自己投影し、お客様はたくさん緑茶がある中で、ヘルシア緑茶を指名買い(応援)するのです。

 であれば、じゃあその物語を作るものは何か。やっと結論にたどり着きました。そう、それが私は企業理念だと思うのです。

 本書では、ここから「全脳思考」という考え方で、個人がビジネスマンとしてこの現代で活躍していくための手法が書かれています。それはそれで素晴らしいと思いますし、私も職場でも実践しています。が、今回はこれは置いておいて、物語を作り出すための理念について書いていきます。

 前回、「不況が教えてくれたこと その2」のエントリーで記載しましたが、理念とは「世の中にこの会社が存在している」という、存在意義の証明、意思表明だと思っています。だから、「お客様を大切に」や「社会的問題を解決する」、「安全を追求する」という言葉が出てくるのです。

 つまり、理念とは、世の中に対する「会社はこんなことをします」という意思表明であると共に、必ず追求していかなくてはならないものではないだろうか。だから、その理念を追求することが、結局は物語を作ると考えているのです。

 ですから、これからの組織で大切なことは、この理念を追求してくことで物語をお客様へ伝える組織なのです。その様な組織はお客様から共感、応援されるからこそ、社員も一生懸命働こうと思うのです。現在は、残念ながら、人類が過去経験したことのない社会にシフトする中で、新しい価値観に企業が対応できず、お客様もしくはお客様から共感、応援されることが少ない企業が多いのではないでしょうか。だから、今働き盛りの35歳から44歳までのミドル層へもろに直撃し、精神疾患などを引き起こしているのではないでしょうか。

 だからこそ、理念を大切にし、組織をしっかり理念を追求できる組織こそ、精神疾患を引き起こすことなく、すべての社員がワクワク働ける世の中を作り、精神疾患の問題を根本解決になると、私は信じています。

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