厚生労働省、平成21年6月1日の雇用率1.63%と発表 – 印象と今後の進展について

 厚生労働省から、今年6月1日時点の障害者雇用率が発表された。雇用率は、1.63%と去年の1.59%と、全体的には0.04%の雇用率がアップした。雇用率はアップとは別に、私は、今回の報道発表資料を詳しく見ると障害者雇用を通じて、日本の雇用情勢とは別の印象を受ける。今回の報道資料(PDFが立ち上がります)からみえる、私が受けた印象と今後の展望を書いていきたい。

 私が受けた印象とは、大手企業は、まだ採用余力、地力があるのに、雇用を絞っている点。そして、今後の雇用率の進展は、この状況を考えると、来年以降の雇用率は大きく変わらないのではないか、と考えている。

 私が、「大手企業は採用余力、地力があるのに、雇用を絞っている」とそのように考えるに至った背景は、今回の報道資料(PDFが立ち上がります)と、日々の営業活動でお話を伺うお客様の障害者雇用の状況と障害者のリストラの状況がリアルにマッチしたからだ。

 実際に私が担当していた企業(社員数1000名以上)では、今年1月から3月に掛けて、リストラを行ったが、その中に障害者は含まれていなかった。しかし、一方で、同時期にあった報道は、障害者の解雇数が急増したという内容だった。実際に、2008年度の障害者の解雇数は、2007年度から比べて、82%アップしている。

 その経験から今回の報道発表資料(PDFが立ち上がります)を見てみる。まずは、P7をご覧いただきたい。社員数1000名以上の企業は、雇用率が1.83%と昨年度の1.78%と0.05%増えている。今回の雇用率アップの0.04%をも超える数字だ。前述のように、これは大手企業が障害者をリストラしていないという証拠になるのではないかと考えている。

 それでは、解雇数が増えた根拠は何なのか。同じく同資料のP7をご覧いただきたい。56-99名、100-299名の雇用率水準は、それぞれ、1.40%、1.35%と低水準のままだ。もちろん、この規模の企業には納付金が発生しないため、障害者を採用するモチベーションはない、と考えられるかも知れない。しかし、私の経験のように、大手企業が障害者を抱え込み、いわゆる中小企業の経営が厳しく、障害者を解雇せざるを得なかった、というのが実情なのではないだろうか。(特に56名-99名の会社の雇用率は下がっている)

 各企業は、雇用率達成という命題が与えられ、障害者を採用しなくてはいけない。これは間違いなく、どこの企業も四苦八苦していることだ。この努力は間違っていないし、各社が本気で取り組んでいることも知っている。しかし、リストラする中で、雇用率のために、健常者をリストラし、障害者はリストラしない、ということが行われている。(もちろん、障害者、健常者関係なく同じくリストラする企業もある)

 一般市場では雇用が厳しいと言われている。しかし、ここから見えることは、まだまだ大手企業は厳しいながらも、障害者雇用の視点から見ると、雇用を確保する余力、地力はあるのではないか。だって、健常者をリストラしても、障害者を抱え込めるのだから。このことが、私が今回の報道発表資料(PDFで立ち上がります)から日本の雇用情勢とは別の印象を受けたことだ。

 そして、今後の雇用率の進展について。おそらく今回のように0.04%と同様にはアップしないと考える。なぜか。社員数1000名以上の企業の雇用率が、1.8%を超えたからだ。

 こちらの記事で言っているが、残念ながら多くの企業は1.8%を達成することを目標に障害者を採用している。経験上、企業は1.8%の雇用率を達成すると、障害者を採用することをストップする。その中でも採用達成意欲の強い1000名以上の企業は言わずもがな。だから、「来年以降は雇用率は大きくアップしない」というのが私の考えだ。

 ただし、私の考えが覆される要素が3つある。1つ目は、厚生労働省が社員数1000名以下企業への雇用率改善の力を入れていることだ。300名以下の企業になると、1名採用するだけで、雇用率はぼんっとあがるので、社員数が多くない会社が障害者を採用することになれば、雇用率は大きく上がると考えられる。つまり、ハローワークがどれくらい1000名以下規模の会社へ雇用指導を強化するかで雇用率が変わる、ということ。

 2つ目は、来年4月から肝障害が雇用率に換算されるようになること。この肝障害の方が多く採用されるようなことになれば、雇用率が大きく上がる可能性がある。そして、最後の3つ目は、そもそもの制度自体が変わることだ。制度が変わるとは、雇用率が2%になるとか、行政指導基準が変わるとか、だ。これは、まぁないとは思うが。

 以上が、私が今回の報道発表資料(しつこいですが、PDFで立ち上がります)を見て感じたことだ。私は、障害者雇用は物事の本質を教えてくれるものだと日々感じている。多くの企業が、雇用率があるから障害者を確保するのではなく、障害のあるなしではなく、数ではなく、「人」として社員のことを考え、行動する会社が多くなってほしいと思う。だって、きっとまだまだ多くの会社は採用余力があるのだから。

“厚生労働省、平成21年6月1日の雇用率1.63%と発表 – 印象と今後の進展について” への1件の返信

  1. こんにちは!
    ネットサーフィンをしてたらブログにたどり着きました。
    自分はいま交通事故による高次脳機能障害で名古屋市総合
    リハビリテーションセンターに通っています。
    この記事の内容をちょうど今日勉強会で学びました♪
    ノーマライゼーションの文章を読んで感動しました。
    涙が出ました。
    まさか大学の一般教養の科目で学んだ世界に自分がいるな
    んて思いもしませんでしたし、不思議です。
    身近に身体障害を持ちながら豊田関連の会社に勤めてる人
    がいたり、統合失調に苦しむ友人、知的障害を持った近所
    の子がいるのに、自分がなってみないと見えない世界を肌
    身で感じています。
    またお邪魔しますのでよろしくお願いします☆

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