最近は、コミュニケーションとか歯医者のことなど、ブログタイトルとは関係ないことを書いていましたが、今日は、ブログタイトルに倣い、数字じゃ見えない障害者雇用の現場について書いていきたい。
今日の題材は、5月7日に厚生労働省から発表になった平成21年度における障害者の職業紹介状況等によると、精神障害者の採用数が増えた(15%増)とのことなので、精神障害のある人の採用数が増えた理由について書いていこうと思う。
しかし、精神障害者が増えた理由を説明する前に、大前提として理解していただかなければならないことがある。それは、企業の「ものさし」と障害のある人の「ものさし」の違いだ。
それでは、企業の「ものさし」から説明していきましょう。そもそも「ものさし」とは何かというと、判断基準と置き換えてもいいと思っています。現在の企業の「ものさし」とは、「利益を得ること」だ。利潤を得ない限り、経済活動を継続することはできないから。だから、利潤を得るために、人をリストラすることもあるし、効率を求めていく。今まで2人でやっていたことが、1人で処理ができるようにならないか?など。
それらは、経済活動としては至極まっとうであり、必ず必要な考え方であるが、それが目的になってはいけないと思っている。しかし、現状、利益を上げることが目的になり、会社としての考え方が、「社員<利益」となる企業が多いことは間違いないでしょう。
一方で障害のある人の「ものさし」はどうだろうか。もちろん、企業で働く以上、効率や成果を出したいという考えは障害のある人も持っている。しかし、なぜ障害者雇用枠で働きたいか?というと、基本的には障害があり、「配慮が必要」だからです。
この企業の「利潤を得ること」と障害のある人の「配慮が必要」という「ものさし」が本質的に相容れない。つまり、企業は効率を第一に求めるにも関わらず、障害のある人は職場の安全性を第一に考える。
「効率」と「安全性」。今でこそ、「安心な職場であれば、社員も効率的に働こうとする」という考え方が浸透しつつあるが、無意識かもしれないが、まだまだ同質な人間だけで、効率を高めようと考える人は多い。だから、企業は効率をあげやすい身体障害のある人を採用しようとする(それは企業が悪いのではなく、現状の価値観の中では真っ当な判断だと思うが)。
以上が、ものさしの説明。そもそも企業と障害のある人の判断基準が相反するわけです。その中で効率をあげやすいため採用されやすいのが、身体障害という話なわけです。
一方、もしかすると、こう考える方がいらっしゃるかも知れません。精神障害者手帳を持っている人も、効率をあげやすいのでは?と。しかし、精神障害は目に見えず、日によって症状が変わるなど、固定されていないのです。
企業にとって、症状が固定されていないということは、柔軟に対応する必要があります。企業としては、安定的に毎日ちゃんと同じ時間に出社してくれることが効率的なのです。しかし、精神障害の人はそうではないし、そもそも目にも見えないし、どう配慮していいかわからない。
ということで、本題。でもなぜこのような状況で、精神障害のある人の採用が特に増えたのでしょうか。さんざん説明してきたので、ご理解いただけると思いますが、「身体障害者の雇用競争の激化」がキーワードだと思います。
どこの企業もこれまで説明してきたように、せっかく採用するなら、身体障害者が採用したいのです。でも、身体障害のある人の母数が増えるわけでもないし、障害部位や年齢、性格、スキル、経験により、どんな身体障害のある人でも採用できるわけではない。だから、採用できない。
であれば、企業や支援者はどう考えるのか。採用できない身体障害ではなく、言葉は悪いが不人気の精神障害のある人をターゲットにする。でも、オフィスで働くことは症状が固定されていないし、欲わらからないから採用しようとは考えない。ということで、精神障害のある人で雇用率を達成しようと考えるのです。
その中でも、特に精神障害のある人の就職で多いのが、農業です。
実際に今回の発表でも、P8にあるように、
○全ての障害種別について「農林漁業の職業」における就職件数の伸び(対前年度比35.4%ー150.0%増)が大きくなっている。
と、農業が伸びている。そして、P13にあるように、精神障害のある人の「農林漁業の職業」に就く割合は昨年と比較して、59%増であり、身体障害37.5%増、知的障害35.4%と比べても特に大きな割合となっている。
しかし、なぜ農業なのか?は聞いたことがないので、リサーチしてみたいと考えていますが、1日の仕事のパターンが朝日が昇って日が沈むまでという極めて人間的な生活リズムであるということが精神障害のある方にとってよい、とは聞いたことがあります。
ということで、今日のおさらい。
■精神障害のある人の採用が増えた理由
1.そもそも企業と障害のある人の判断基準は相反するもの。
2.効率を求める企業は、身体障害のある人を採用したい。
3.身体障害のある人は母数が増えるわけでもなく、競争が激しい。
4.1から3によって、自然と精神障害のある人の採用に考え方が向かっている。
5.その中でも農業の就職が増えている。
以上、精神障害者の就業数が増えた理由でした。かなり書きなぐり感が満載で、伝わっているか疑問です。聞きたいことなどあれば、詳しく解説しますので、聞きたい方はコメントを残して下さい。
次回は、おさらいの1にある「そもそも企業と障害のある人の判断基準が相反する」という問題を解決するためにはどんなことが考えられるか?を書いていきたい。今週中には書きたいと思っています。