Twitterから下記のようなご質問をいただきました。
障害者雇用の給与だけではとても生活できず障害年金受給と併せて初めて生活できるっていう現状にはどうお考えでどういう対策が求められてるとお思いですか?
ということで、私の考えを回答します。
まずは1つ目の質問の「障害者雇用の給与+障害者年金」で生活することの現状についてどう思うか?ということに答えていきます。
どう思うか?と言われたら、「生活して行けているのであれば、いいじゃないですか」と答えます。社会保障として制度があり、それで生活していけるのであれば、どんどん使えばいいと思います。ただ、この状況には2つ問題があると考えます。1つは、生きがい。2つ目は、国の社会保障費の問題です。
1つ目の生きがいについて説明します。皆さんもわかると思いますが、毎月一定額収入があっても、時間が有り余って、何かにチャレンジしないと、人は生きがいを感じません。私は、人生の目的は、今までできなかったことができるようになることで、感動や達成感を味わうことだと考えています。それこそが人生の生きがいだと感じます。お金はそのための手段です。
「障害者雇用の給与+障害者年金」は、その生きがいをなくしてしまいます。障害者年金とは、「社会が迷惑をかけているから、お金をあげるからで我慢してね」という社会保障制度だと思っています。そこには、「生きがい」という考え方はありません。何度も言いますが、お金は手段だからです。
また、いつも言っていますが、障害者雇用の給与(軽度身体障害で他の社員と同じ給与水準で働ける人を除く)と言うのは、障害者だから採用する訳です。私がみてきた中で、障害者として採用した人々に「生きがい」「働きがい」を提供している会社はごくわずかです。
人は生活するために生きてはいません。今までできなかったことができるようになることで、感動や達成感を味わうことで生きがいを感じるために人は生きています。「障害者雇用の給与+障害者年金」は、命の保証はしていますが、生きがいの保証はしていません。これを問題だと考えます。
そして、2つ目。国の社会保障費について。これは今調べておりますので、明確な数字としては今すぐには答えられませんが、2020年までに国の財政が破綻するとも言われています。先ほど、「障害者雇用の給与+障害者年金」で命の保証はできていると言いましたが、これからは命の保証もなくなる可能性があるのです。障害者年金だけをもらって生活していく・・・ということが難しくなる可能性があるのです。
ですから、私は、「障害者雇用の給与+障害者年金」自体は悪いことだとも良いことだとも思いませんが、生きがい、国の社会保障費という側面から考えた時に、問題があると考えます。
であれば、どのように対処していけば良いか。これもいつも言っていることですが、企業と労働者、お互いの努力が必要であると考えます。
それぞれ説明します。企業の努力から。
大半の企業は人を効率でしかみていません。売上を上げるための駒です。社員の成長、働きがいは、自己責任という名の放任により残念ながら忘れ去られてしまいました。忘れ去られたと言うか、そもそもそう言う考えを戦後の日本企業は持っていなかったのかもしれません。
戦後、日本企業は、アメリカに追いつけ追い越せ。その結果、経済は右肩上がりで、経営者も大きな変化はなく、社員も会社に雇われていれば、一生安泰でいれたのです。ですから、社員の成長、働きがいという考え方自体を持っていなかったのかもしれません。
しかし、時代は変わりました。市場の変化が激しく、先の見えない時代では、現場の社員が臨機応変に動くことが求められます。その時に大切な考え方が働きがいなのです。働いていて楽しい。お客様のためになっている。こういう考えから、現場の社員が臨機応変に動くことができるのです。
じゃあ、そのために障害のある人はどのような役割を担うのか。その答えは以前書きました。
特に面白かったのはパネルディスカッションの賃金の話です。障害者とパート社員の賃金が同じだと軋轢が生まれるという質問についてです。
そこで、且田さんは、「社員がお互いが補完し合う会社文化を作りたい。だから、障害者の人は必要だし、そうしていると彼らも戦力になる」。そして、川畑さんは、「人の成長を応援するのが企業の仕事。誰しもができないことがある。だから、障害のある人も賃金は同じ」と効率だけで見ていない点が非常に特長的でした。
この心遣いが、健常社員にも伝わり、 全社員に誇りとモチベーションをもたらす。そんな職場を作るために、どこの会社も障害のある人を採用していました。
これは、今回研究報告をされた小林さんの発表にもありました。障害者雇用を始めて業績が高くなった企業は、仕事の進め方の見直しや必要な設備投資を行っている。そして、人材採用にこだわり、社員の長所を生かす経営を重視、社員との対話の機会を増やすことに注力していると。
効率だけで人を比べる職場は遅かれ早かれ、 疲弊し、社員のモチベーションが下がり、結果的に効率も下がるのだろう。
つまり、効率でみるのではなく、どんな人も包括できる会社を作るのです。そのような会社こそが、社員のモチベーションが高く、この時代に生き残れる会社なのです。このような会社が多くできれば、障害者雇用枠という考え方もなくなり、障害があっても、一般の人と同じ給与をもらえるようになるでしょう。
そして、最後に労働者の努力について。
労働者の努力は、自分の強み、できること、やりたいことを明確にし、自分の魅力を高めることです。先ほど書いたように、市場の変化が激しい時代ですから、企業にとって採用したいと思われる人材になる必要があります。そのために、自分の魅力を高め、強み、できること、やりたいことから企業に貢献できる人材になるのです。
ISFネットグループと言う、日本企業の多くが採用しないニート、フリーター、引きこもり、高齢者、障害者、時間制約のある主婦などを多く採用している企業があります。なぜ彼らは、多くの企業が採用しない人材を採用するかと言うと、長く勤めてもらえるからです。
そのグループを束ねる渡邉社長はこうおっしゃいます。「健常者は、1年で技術を習得するが、2年で辞める。多くの企業が採用しない人材は、育成に2年掛かるが、その後定年まで勤めてくれる。そのような人材の方が経営的にはメリットが大きい」。これは、渡邉社長にも直接お話したのですが、「今まで育成に2年掛かっていた人材が、もし育成が1
年でできそうな人材だったら採用したいですか?」と聞くと「もちろん!」という回答でした。
つまり、障害があっても、1年で育つような人材になるのです。そのために、自分の良い所、魅力、できること、やりたいことを明確にしておくのです。そして、人間的な魅力を高めておくのです。また、できれば家庭でビジネスマナーや礼儀などもしっかり教えておきたいところです。
この様な企業と労働者側の努力の結果が、働きがいをもて、日本という国が続いていく方法ではないかと考えています。
その先には、必ず「障害者雇用の給与+障害者年金」という枠組みはなくなっているでしょう。